瀬戸内の穏やかな気候に恵まれた香川県高松市。オリーブ畑や田園風景が広がるこの地で、農薬や肥料に頼らず、自然の力を信じてブドウを育てる作り手がいます。
今回は、2024年に長年の会社勤めを終え、ワイン造りに専念する新たな人生をスタートさせた「Kamano Vineyards」の釜野清登(かまのきよと)さんと、そのこだわりの栽培哲学をご紹介します。
■「二刀流」から始まったワイン造り。転機は「放置された畑」にあり
釜野さんがワイン造りの世界に足を踏み入れたのは2018年のこと。高松市内の耕作放棄地を開墾し、ブドウの苗を植えたのが始まりでした。
当時は地元の上場企業に勤める会社員。「平日は会社、週末は畑」という、いわゆる「二刀流」でのスタートでした。しかし、開始直後に東京転勤が決まり、畑の手入れが思うようにできない時期が訪れます。
たまに帰省すると、畑は草が伸び放題。絶望しかけた釜野さんでしたが、そこで目にしたのは、雑草の中でも逞しく実をつけるブドウの姿でした。
「草が生えていても、ブドウは力強く育つ」
この原体験が、現在の栽培スタイルの原点となりました。

■農薬を使わない。「草」を味方につける栽培のこだわり
Kamano Vineyardsの最大の特徴は、徹底した「自然栽培」と「草生栽培」です。
1. 自然の調整機能を活かす「草生栽培」
釜野さんの畑では、ブドウの木の間に草がびっしりと生えています。
「草が畑の湿度を調整してくれているのではないか?」という気づきから、あえて草を刈り取らない選択をしました。湿度が高いときは草が水分を吸収し、乾燥時には水分を放出してブドウを守る。草を敵とするのではなく、共生することで自然のバランスを保っています。
2. 「不揃い」こそが生命力の証
「合成農薬を使えば収量は上がるが、それは選ばない」と語る釜野さん。
無農薬栽培は病害虫のリスクが高く、2024年には被害で収量が半減するという厳しい現実もありました。しかし、それを乗り越えて育ったブドウは、糖度やポリフェノールが凝縮された、力強い味わいになります。見た目の美しさよりも、その一粒に詰まった土地の力を優先しています。

■身体に染み渡る「gubi-glou(グビグル)」な味わい
現在、収穫されたブドウは、自然派ワインの世界的名手・大岡弘武さんの醸造所(岡山県)で委託醸造されています。天然酵母・自然発酵・酸化防止剤無添加で仕上げられたワインは、食事に優しく寄り添う心地よい酸味が魅力です。


釜野さんはこのスタイルを、世界的に人気の「glou-glou(グルグル)」と、日本語の「グビグビ飲める」を掛け合わせ、「gubi-glou(グビグル)」と名付けました。
- SHUUUU!(オリなし)
- run run run(オリ少しあり)
- Boku Wakusei(オリまあまああり)
同じタンクのワインでも、瓶詰め時の「オリ(澱)」の量によってラベルを変える遊び心も、自然派ワイン愛好家の心をくすぐります。
response error response error response error response error response error response error■2025年、高松に待望の自社ワイナリー誕生へ
2024年に還暦を迎え、会社を定年退職した釜野さん。「これからはワイン造りに全精力を注げる」と、その表情は希望に満ちています。
2026年には高松市内に念願の自社醸造所を建設予定。温暖な高松では珍しいピノ・ノワールの栽培にも挑戦しており、香川のテロワールがどう表現されるのか、期待が高まります。
■作り手に会える場所:日仏ワインの小箱 ギンガレンガ

釜野さんは、高松市内で「日仏ワインの小箱 ギンガレンガ」というワインバーも主宰しています。運が良ければ、畑帰りの釜野さん本人から、ブドウ栽培の裏話を聞きながらワインを楽しめるかもしれません。
香川の太陽と風、そして雑草たちの生命力が詰まったKamano Vineyardsのワイン。ぜひ一度、その身体に染み渡る優しさを体験してみてください。


